犬のフィラリア予防
フィラリア症(犬糸状虫症)はフィラリアという寄生虫が犬の体内に寄生して心臓に機能障害を起こす病気です。
猫に寄生することもあります。フィラリアは蚊によって媒介されます。
フィラリアに感染した犬の血液を吸血することで蚊の体内にフィラリア幼虫が入り、
別の犬を吸血したときにその幼虫がその犬の体内に入ります。
こうして感染が広まっていきます。犬にとってとても恐ろしい病気ですが、100%予防することができます。
フィラリア症についてはご存じの方も多いかと思いますのでここでは意外と誤解されているフィラリア症の予防と
近年問題になってきた猫のフィラリア症についてご説明します。
犬のフィラリアの予防とは???
イヌに影響を及ぼすフィラリア生活環
- 一定温度以上になると蚊の体内で、フィラリアの幼虫が犬への感染可能な感染幼虫となる。
- 感染幼虫は蚊の吸血時にイヌの体内に侵入する。
- イヌ体内の感染幼虫は3~10日で体内移行幼虫となる。
- 体内移行幼虫は約70日で未成熟虫となる。
- 未成熟虫は血液内にはいり、約50日で心臓に達した後、肺動脈に移行し子虫を産む。
フィラリア予防薬は・・・
- 蚊に初めて刺された1ヶ月後に投薬を開始し、最後に刺された1ヶ月後に投薬を終了するのが適切です。
当院ではHUDという計算式にもとづいたデータに、前後2週間の幅をもたせ、感染幼虫を持った蚊の活動期間を、
4月20日から11月20日と想定します。
したがって、予防薬は、[ 5月20日から・毎月1回服用し・12月20日で終了 ]となります。 - 投薬を開始する前に、毎年必ず血液検査が必要です。
フィラリアに感染した状態で予防薬を服用すると、重篤な副作用を起こし死亡することもあります。
薬品の使用上の注意としても、投与前のミクロフィラリアの検査実施が明記されています。
*毎月きちんと投薬しても、ワンちゃんがこっそり吐き出したり、吸収されず未消化で排泄されたりといった危険性があります・・ - 現在認可されている予防薬には3つのタイプがあります
- 内服タイプ - 月に1回服用します。
- 注射タイプ - 1年に1回皮下注射します。
- 滴下タイプ - 月に1回皮膚につけます。
内服は苦手という子はご相談下さい。
猫のフィラリア症
蚊に刺されることによって感染するフィラリア症は犬の疾病としては大変恐ろしいものとしてよく知られている病気ですが、
近年は猫においての危険性にも注目があつまっています。
どうやって罹るの? 猫も罹るの?
蚊がフィラリア症に感染した犬を吸血し、体内にフィラリア幼虫を取り込みます。
この蚊が次の犬または猫を吸血する際にフィラリア幼虫を送り込み新たな子に感染をおこします。
フィラリアは犬が主たる寄生主ですが猫にも寄生します。
地域猫に関する調査では 調査対象猫の約10%が感染していたとの報告もあります。
感染するとどうなるの?
体内に入ったフィラリアの生活環は犬と猫とでは違い症状も異なってきます。
猫の主たる症状は・・・
- 慢性の呼吸器症状 - [犬糸状虫随伴呼吸器疾患]とよばれ、フィラリアに対する拒否反応として咳や呼吸困難などの症状が現れます。
- 突然死 - 死滅した虫体が肺動脈に詰まったり、虫体にアナフィラキシーショックを起こしたりして突然死に至ります。
診断・治療は?
犬と違い猫のフィラリア症の確定診断は非常に困難です。従って治療も対処療法が主になります。突然死に関しては対処法がありません。
予防法はあるの?
あります、ごく簡単な予防法が。
すでにお使いいただいている方も多いかと思いますが、当院でお出ししているフィラリアにも効果のあるスポットタイプの
ノミ予防薬(1本 1400~1730円)を月に1回塗布するだけで予防できます。
感染率が低い、寄生数が少ない、しかも無症状の子が多いことからこれまでは猫の疾病としては重要視されませんでした。
当院でも積極的な予防をお勧めしてきませんでしたが、近年の報告をみると予防の必要性を感じます。
感染の確立は少なくとも、罹ってしまうととてもやっかいな病気です。
ノミ予防を兼ねて、ご自宅で簡単な方法で予防できる病気ですから是非、万一に備えていただければと思います。